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「無月経のホルモン治療」

閉経後はもちろん閉経までの女性、とくに思春期の女性にもホルモン治療が必要な ときがあります。基本は卵巣機能の回復と女性ホルモン欠乏を防ぐのに必要最小限のホルモンで済ませるようにすることです。


ホルモン治療が必要な理由
思春期の女性や閉経前の女性では、月経不順がひどい時、月経が長期間無い時、などには最低限のホルモン治療が必要です。具体的には45日以上も月経が無いときには治療が必要でしょう。
その理由は、
(1) 月経が不順やないということは、女性ホルモンの分泌が少ないか無いかです。そうであれば女性らしさ(肌、乳房、子宮・膣・外陰部など)が失われるか、発育しないことになるので、それを予防する
(2) 時々女性ホルモン剤を使用することにより、脳の中枢に刺激を与えて、自然の周期的な月経が回復するのを促すためです。これは将来妊娠するためにも必要なのです
 
 
ホルモン治療の原則
ホルモン治療の際に最も重要なことは、「必要最小限のホルモン剤で、卵巣機能を正常に回復させること」が目的なのです。そのために実際上は次の二つのことが大事になってきます。
(1)できるだけ弱いホルモン剤を使用する
本人の現在の卵巣の機能の障害の程度にあわせたできるだけ弱いホルモン剤がいいのです。強すぎると月経(あるいは出血)は出ますが、かえって脳の中枢を抑制してしまうのです。 弱いホルモン剤を使って出血が出なくても、次には少し強いホルモン剤を使って出血を起こさせれば問題はないのです。
 
(2)早く使用しない
月経や出血は、1ヵ月に1回あるに越したことはありませんが、ホルモン剤で無理やり1ヵ月に1回出血を起こさせる必要は無いのです。1ヵ月に1回のためにホルモン剤をあまり早く飲むと(たとえば月経や出血の開始日から20日目などから)、本人の卵巣が働いて月経・出血があったのか、ホルモン剤によりあったのかが区別がつきません。したがって月経・出血が始まってから45日前後は待っても月経が始まらなければ本人の卵巣が働いていないと判断してホルモン剤を使用すればいいのです。ただし明らかに待つ必要がない卵巣の障害の状態である場合は別です。
 
ホルモン療法の実際
特別の病気のときは別ですが、ホルモン剤による治療の方法は、(1)卵巣の障害の程度、(2)妊娠の希望があるかないか、(3)内服薬か注射か、により決まります。具体的には以下の4通りが基本なのです。治療法の名前は難しいですが、内容は易しいのです。
*妊娠の希望がない

妊娠の希望がない場合は、排卵を誘発する必要はないのですが、中には本当に排卵するのかが心配な女性があれば試験的に(例外的に)排卵を誘発することも無くはありません。

(1) 黄体ホルモン周期的投与法
卵巣の働きの障害の程度が軽い場合に行う方法で、「ホルムストローム療法」とも呼ばれています。この場合には卵巣がある程度働いてはいるが、月経があるまでには働いていない場合なのです。45日くらい月経が無ければ黄体ホルモン剤を内服するか注射するのです。
黄体ホルモン剤(たとえばルトラール1日2錠7日間など)を内服すれば、内服終了後1週間〜10日以内には出血があるはずです
注射がよければ、たとえばプロゲホルモンデポ125mg1アンプルを注射後10〜14日して出血があるはずです
(2) 卵胞ホルモン・黄体ホルモン順次投与法
卵巣の働きの障害の程度がやや強い場合に行う方法で「カウフマン療法」とも呼ばれています。この場合は卵巣がほとんど働いていない状態なので、二種類のホルモン剤である卵胞ホルモンと黄体ホルモンを順次使用する方法です。
卵胞ホルモン(たとえばプレマリン0.625mg1日1錠)を10〜14日服用後、卵胞ホルモンと黄体ホルモン(たとえばルトラール1日2錠)を12〜14日服用する方法です。両方を服用終了すると2〜7日で出血があります。これを繰り返すのです。
注射だと卵胞ホルモンの注射(たとえばプロギノンデポ10mg1アンプル)をして10日後に同じ卵胞ホルモンの注射と黄体ホルモンの注射(たとえばプロゲホルモンデポ125mg1アンプル)の両方を注射するのです。注射後10〜14日で出血があるはずです。
この治療法を3クール(3サイクル)行ったあとに、上記の(1)の治療法を行い、出血が無ければ再び(2)を3クールするのを繰り返します。もし3クールのあと(1)の方法で出血があれば卵巣機能が改善したことになり続けて(1)を行うのです。
*妊娠の希望がある
(3) 弱い排卵誘発法
排卵障害の原因が脳の中枢にあり程度が軽い場合では、クロミフェン(たとえばクロミッド)を月経または出血の5日目から1日1錠ずつ5日間内服する方法です。
排卵するとすれば80%が月経または出血の開始から数えて13日目から 1 7日目の間に起こるのですが、内服開始直後に排卵することもあるのです。
排卵率は70%程度で、妊娠率は40%程度とされています
この治療法の副作用は、(1)子宮内膜が薄くなる、(2)頚管粘液の量が減る、の二点ですが、これらはいずれも妊娠しにくい方向に作用するのです。したがってこの治療法では、排卵はするが、妊娠しにくいともいえますから、治療は数周期に限って行うべきでしょう。いたずらに続けても妊娠はしにくくなるはずです。
(4) 強い排卵誘発法
弱い排卵誘発法では効果が無い場合には、直接卵巣を刺激する注射による方法を行います。出血の5日目前後からh MG 製剤(たとえばヒュメゴン)150単位を1日おきに注射して、卵巣内の卵胞の大きさが18〜20mmになれば、h CG 5,000単位を注射すれば注射後24〜36時間以内に排卵するのです。
この治療法では無理に卵巣を刺激するために卵胞が多数発育して、多発排卵を起こし、多胎妊娠の可能性(約30%)があります
卵巣が腫大し、腹水が溜まるなどの卵巣過剰刺激症候群が起こる可能性もあります
*特殊な病気のとき
たとえば高プロラクティン血症あるいは乳漏症のときは原因に合わせたホルモン治療が必要です。その他の特殊な場合は他に譲ります。
 
 
 
【2005年4月更新】


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