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更年期に子宮筋腫などの良性疾患の手術時に、両側の卵巣を摘出するかどうかは判然としていません。どうすればよいのでしょうか。

予防的卵巣摘出と生命予後

50〜54歳時の卵巣摘出とホルモン治療による80歳までの生存率を比較した研究(Parkerら,2005)では、以下の表のとおりです。

卵巣
摘出せず
摘出せず
摘出
摘出
エストロゲン治療
施行せず
施行
施行せず
施行
80歳まで生存する率
62.5%
62.8%
53.9%
62.2%
心筋梗塞で死亡する率
7.6
7.6
16.0
3.6
大腿部骨折により死亡する率
3.4
2.1
5.0
3.2
脳卒中により死亡する率
2.6
3.6
2.5
3.6
乳ガンにより死亡する率
1.8
1.8
1.8
1.8
卵巣ガンにより死亡する率
0.5
0.5
0
0

この研究結果から、
卵巣を摘出しない方が、摘出した場合より80歳までの生存率は高いです
卵巣を摘出して、HRT(ホルモン補充療法)を受けなければ、生命予後が最も悪い(53.9%)です。その理由は、大腿部骨折や心筋梗塞で死亡する率が関係している可能性があります
卵巣を摘出して、HRTを受ければ、卵巣を摘出しない場合と同じ程度(62.2%)の生命予後です
50歳過ぎから80歳まででは死亡する原因で多いのは心筋梗塞で、ついで大腿部骨折、脳卒中です
卵巣ガンにより死亡する率は比較的少ないといえます
 
残存卵巣のガン化

子宮を摘出して、卵巣を残した場合には、
残した卵巣がガン化する可能性があります
10万人に7人程度が残された卵巣からガンが発生すると推測されています
術後に卵巣が腫大してきているかは検診すればよいのですが、子宮を摘出して子宮がない場合は、子宮ガン検診を受けることがなく、検診がおろそかになりやすいです
 
閉経前後のホルモン分泌

更年期・閉経前後には、
まず血液中のFSH(卵胞刺激ホルモン)値が、閉経の数年〜10年前から徐々に上昇し始めます
次に血液中のLH(黄体化ホルモン)値が、閉経前数年前後から上昇し始めます
最後に卵巣からのエストロゲンのうちのエストラジオールが減り始めます
閉経すると卵巣からはエストラジオールは分泌されません
しかし閉経しても、卵巣からのアンドロゲン(男性ホルモン)は何年間は分泌します
この卵巣からの男性ホルモンは脂肪組織でエストロゲンの中では作用の弱いエストロンというホルモンに転換されます
したがって閉経しても卵巣から何年間はホルモンが分泌されていることになります
ただし女性の副腎からは閉経前も閉経後もアンドロゲン(男性ホルモン)が分泌されているので、これがエストロンに転換されています
 
両側卵巣の摘出による影響

両側卵巣を摘出した女性では、自然に閉経した女性に比べて、
血液中の
   ・アンドロゲン
   ・エストロゲンの一つのエストロン
のレベルは低いです
これらのホルモンのレベルの差が多少の影響をしている可能性はあります
骨密度には差がみられません
 
まとめ
このような状況を考えて、予防的に卵巣を摘出するか、しないかは最終的には本人が決めることですが、卵巣を摘出すればホルモン治療が必要であることは間違いないようです
 
【2009年7月更新】


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