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「ホルモン治療薬(その2)排卵誘発剤」

月経があれば排卵があるのが普通ですが、中には排卵しないために妊娠しないことも不妊症の3分の1あります。排卵させる薬が必要ですが、いくつかの種類があります。
 
排卵誘発剤が必要な場合
月経があれば通常は排卵がある「排卵周期」ですが、中には無排卵の「無排卵周期」または月経がない「無月経」のこともあります。その原因や程度もさまざまです。排卵誘発を行う場合の、
大原則は

1.

妊娠を希望する

2.

妊娠を希望していないが、排卵するかどうか知りたい
のどちらかの場合に限られるのです。

さらに無排卵症か無月経の

1.

原因が特定でき、原因治療の効果が相当あるが、さらに確実な排卵を必要とする

2.

原因が特定でき、原因治療の効果が相当期待できても時間がかかる
3. 原因が特定できても原因治療の効果が期待できない
4. 原因が特定できない
場合に排卵誘発が行われるのです。
 
排卵誘発が行われる月経異常
原因はともかくとして月経の状態などが、無月経、無排卵周期症、黄体機能不全、散発性排卵周期症(ときどき排卵する)、の場合に排卵誘発が行われます。
 
排卵誘発に慎重な場合
妊娠を希望していないのに単に排卵していないというだけで排卵誘発を行うことは、
(1)費用、(2)時間、(3)副作用、(4)効果の永続性がない、
などの点から、慎重でなければならないのです。
 

原因療法が原則
無排卵や無月経の原因があれば、その治療が優先されるのは当然のことです。たとえば高プロラクティン血症があればプロラクティンを下げる治療などであります。

 
排卵誘発剤
排卵誘発剤には、大きく分けて二種類あります。内服薬と注射剤ですが、その作用や副作用、手間、費用など大きく異なるのです。
  内服薬 注射剤
対象 排卵障害がより軽症の方 より重症の方
作用機序 脳を刺激して排卵させる 卵巣を刺激して排卵させる
作用効果 より弱い より強い
効果 50〜70%排卵 80〜90%排卵
副作用 頚管粘液が減る・子宮内膜が薄くなる 卵巣が腫れる・多胎妊娠
多胎妊娠率* 6%(ほとんどが双胎) 25〜30%(双胎、三胎も)
奇形 服用しない自然の時と同じ程度 使用しない時と同じ程度
手間 かからない かかる
費用 かからない かかる
(*自然妊娠での多胎妊娠率は0.8〜1%)
 
内服薬
排卵させる内服薬には二種類があります。作用機序は同じですが、効果や副作用に差があります。
一般名 クロミフェン サイクロフェニル
商品名 クロミッド・フェミロン セキソビッド

排卵誘発効果

より強い より弱い
排卵後の妊娠 より少ない より多い
副作用
頚管粘液の減少 より強い より弱い
子宮粘膜の薄さ より強い より弱い
(より強い・より弱い・より少ない・より多いは両者を比較した場合の相対的な表現です)

両者の差は、クロミフェンが排卵誘発効果は強いが妊娠率が低い、のに比べサイクロフェニルは排卵誘発効果が弱いのですが一旦排卵すると妊娠率が高いのです。
排卵があったうちの80%は、内服開始後9〜13日目に起こっています。

 
注射剤
注射剤には、大きく分けて3種類あります。それらは
(1) 卵胞を発育させる作用のあるFSH(follicle stimulating hormone、卵胞刺激ホルモン)そのもの
------- FSH製剤
(2) 発育した卵を排卵させるLH(luteinizing hormone、黄体化ホルモン)作用のあるHCG
------- HCG製剤
(3) 主にFSH作用を持つがLH作用を持つ成分も混在しているもの
------ HMG製剤
です。実際の注射剤としては下記のように多くの製品があります。それらにはそれぞれ含まれているホルモンの率が異なり、目的に合わせて使用するのです。

自然の月経周期では、
(1) 月経周期のはじめにはFSHが作用し卵胞を発育させる
(2)

ある程度卵胞が大きくなればFSH作用に徐々にLH作用が加わる方がよい

(3) 卵胞が18〜20ミリ以上になればLH作用のみで排卵する
ことが繰り返されています。これを模倣するように注射剤を使えばよいのです。
つまり
(1)

はじめはFSH作用のある注射剤を

(2)

つぎに主にFSH作用のある注射剤の中でもLH比が少ない順に

(3) 最後はLH作用のみを持つHCGを
のようにすれば理屈通りなのですが、実際には(2)のなかの注射剤を順次変える基準が決まっていません。したがって通常同一の注射剤が使用されています。
一般名 作用 商品名* FSH:LH比
FSH製剤 FSH作用 フォリスチム 1:0
HMG製剤 主にFSH作用 フェルチノームP 1:<0.000008
フォリルモンP 1:<0.0003
HMG「日研」 1:<0.05
HMGフジセイヤク 1:1/3
ゴナドリール 1:1/2
パーゴグリーン 1:1/2
HMGテイゾー 1:1

HCG製剤

LH作用 HCG 0:1
(* 主に150単位の注射剤を示した)排卵が起こるとすれば、HCG注射後24〜36時間です。
 
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
注射剤による排卵誘発治療によって、卵巣が腫大する、腹水が貯まる、吐き気がする、重症になると胸水がたまり呼吸困難になる、などの症状がでるのを「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」と呼んでいます。この卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生は少なくはないのですが、全てが治療を要するのではなく、むしろ治療を要する場合は少ないのです。
(1)重症度の判定
症状・検査

軽症

重症
 
卵巣腫大
腹部膨満
吐き気
嘔吐
腹水
胸水
循環血液量の減少
  放置 経過観察 要入院
(Lunnenfeld の分類を一部改変)
これらの中でも、
*卵巣腫大

8センチ、12センチが一応の目安になる大きさです。
8センチ以下は問題なく経過観察、8〜12センチは要注意、12センチ以上は要入院が一応の目安ですが他の症状も参考にして判断します。

*循環血液量の減少

血液検査により血球容積(45%以上)、低蛋白血症、電解質異常、症状として尿が少なくなる(乏尿)、体重増加が目安ですが重症度を判定するのに重要です。


(2)治療
治療が必要なほどの重症例では、(1)入院・安静、(2)水分・電解質・蛋白の点滴などによる補給が主になります。

(3)どうなるのでしょう
重篤になると、ショック、脳血栓、脳浮腫、腎不全などの致命的な状態になることもありますが、
初期に管理が適切であれば経過は良好です
卵巣の腫大が減ってくれば軽快する徴候です
妊娠していなければ1〜2週間で軽快します
妊娠していればさらに長くかかります
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症した例では妊娠している率が高いです
 
 
 
 
 
【2006年9月更新】
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