「妊婦と喫煙」
妊婦に限らず喫煙は健康を害することは分かってはいても止められないものです。最近は女性の喫煙者が増えています。妊娠すれば止めればいいのでしょうか。
女性の喫煙者は
国民栄養の現状(平成14年国民栄養調査結果)によりますと、昭和63年(1988年)から平成14年(2002年)の約15年間に、20歳代と30歳代の男性の喫煙率は63%から55%と8ポイント減少していますが、20歳代と30歳代の女性の喫煙率は11%から17%と逆に6ポイント増加しています。わが国の女性では若いほど喫煙する人が増えているのです。
妊娠中の喫煙者は
厚生労働省の調査(
乳幼児身体発育調査
)によりますと、妊娠中の喫煙者は、
平成2年(1990年)5.6%から10年後の平成12年(2000年)10.0%に増加している。
とくに年齢が若いほど妊娠中の喫煙率が高くなっています。
本人が喫煙しなくても同居者の喫煙率は46%と高いことから受動喫煙が多いことも特筆すべきことです。
いずれにしても妊娠中に喫煙もしくは受動喫煙している女性は少なくみても10%以上であることは間違いないようです。
妊娠中の喫煙は妊婦に
妊娠中の喫煙は胎盤に関する異常が増加するといわれています。
*流産
*早産(1.5倍)
*前置胎盤(2.6倍)
*常位胎盤早期剥離(2.5倍)
*前期破水
妊娠中の喫煙は胎児に
*子宮内胎児発育遅延
*低出生体重児(平均200グラム軽くなる)
*乳児突然死症候群
が起こることが問題なのです。
なぜ起こるのですか
タバコに含まれているニコチン、一酸化炭素、タールなど200種類以上の有害物質は、主に以下の3つの作用により胎盤や胎児に影響していると考えられています。
1
主にニコチンが胎盤や子宮の血管を収縮させ、胎盤での血流を減らし、胎盤機能を低下させ、胎盤を通じての胎児への血流を減らします
2
一酸化炭素は酸素を運ぶ働きのあるヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンの働きを低下させ、胎児での慢性の酸素欠乏を起こします
3
胎児の呼吸運動を抑制させる
これらの作用の総和として、妊娠中の喫煙により胎盤の機能が低下し、子宮内の胎児の発 育が阻害され、最終的には周産期死亡率(*)が1.5倍に増加するのです。
(*)周産期死亡率=(妊娠満22週以降の死産数+出生1週間未満の新生児死亡数)÷(妊娠22週以降の死産数+出生数)
喫煙本数は
喫煙本数と妊娠中の異常の発生する率は大いに関連しています。
*
とくに胎児の発育の悪さは、喫煙本数が多くなるほど重症になるのです。たとえば1日の喫煙本数が1本増えれば約10〜15グラム出生時の体重が減るといわれています。
*
早産率にも影響します。1日10本吸うと早産率は11%と吸わないときの約2倍になり、1日21本以上だと早産率は25〜33%、3〜4人に1人と極めて高率になります。
喫煙で奇形は
妊娠中の喫煙により新生児の奇形が増加することはみられないとする報告がほとんどですが、一部に口唇裂・口蓋裂の発生率がやや増加するとの報告もあることはあります。
児の精神発達は
妊娠中に10本以上喫煙すると、児の発達スコアが低下し、児は多動で興奮しやすくなるとの報告もありますので、妊娠中の喫煙は胎児に対する神経毒性があると考えられます。
タバコを止めれば
妊娠してから喫煙本数を減らせば、常位胎盤早期剥離と低出生体重児の発生頻度が減少します。また妊娠初期に禁煙すれば、低出生体重児の発生頻度は増えずほぼ正常ですし、早産率も減少するとされています。したがって妊娠が分かってからでも禁煙することによりさまざまな障害を防げたり、減少させたりすることができるのです。
受動喫煙の影響は
妊婦本人が喫煙している場合はいろいろと影響がありますが、周囲の人、とくに夫が喫煙している場合の受動喫煙でも影響が出るのです。たとえば低出生体重児の発生頻度は、夫の喫煙により1.7倍に増加するのです。したがって妊婦本人のみならず妊婦を取り巻く周囲の方も喫煙は慎み、禁煙するように努めるべきでしょう。
授乳期の喫煙は
ニコチンは乳汁中に移行し、児に影響します。また乳児突然死症候群、呼吸器感染症、中耳炎、喘息などが増加するのです。
喫煙は百害あって一利なし
妊娠中の喫煙は害ばかりです。妊娠が分かれば禁煙することで多少の予防にはなりますが、喫煙を止める方が身体そのものには良いのですから、妊娠する前から禁煙することが大事です。
(日本産婦人科医会報、平成16年3月1日号より抜粋・改変)
【2006年1月更新】
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