トップへ 院内案内 思春期 一般疾患 更年期 メールマガジン 産婦人科英語豆辞典



いわゆる着床出血

最近「着床出血」なる言葉が一般によく使われていますが、妊娠過程ではいわば生理的な出血とも考えられています。正しく理解しておきましょう。
 
「着床出血」という言葉
インターネットや医学書以外の本には「着床出血」という言葉が出てきます。これは医学用語としては頻繁に使う言葉ではありません。おそらく「 Implantation bleeding 」という英語を訳したのでしょう。 これ に相当する確かな日本語の医学用語はありません(日本産科婦人科学会の用語集にもありません)。なぜないのかもはっきりしません。
 

着床出血とは ?
最後の月経があったあとに排卵・受精・着床したあと、つまり妊娠した直後にある出血をさしていますが、その特徴は、

1、 出血の時期は、つぎの予定月経ころ
2、 出血の量は、月経血よりも極めて少なく
3、 持続期間は、2−3日から 1 週間続くこともある
のです。この出血は Hartman徴候と呼ばれていますが、いわば着床過程での生理的な出血ともいえます。
 
着床出血の本態は?
問題はこの出血の機序、つまり妊娠したのになぜ出血するのかです。二つの説があります。
「第一の説」は、よく言われており、「受精卵の組織融解説」です。

1、

受精卵が子宮に着床するときに母体側の子宮内膜に接触します。

2、

その際に子宮内膜を「溶かして」深く侵入していくのです。

3、

そのときに子宮内膜側の血管も破壊して共通の「池」を作ります。

4、

この「池」を通じて母体血から栄養などをもらうのです。

5、 この「池」は、はじめ子宮内腔の方にも少しの隙間があいているのです。
「第二の説」は、「ホルモン説」です。

1、

妊娠しない場合は卵巣から分泌している卵胞ホルモンも黄体ホルモンが減るので出血、つまり月経が始まるのです。

2、

妊娠したときには、着床してできた胎盤から別のホルモン(絨毛性ゴナドトロピン、h CG )が分泌されます。このホルモンは卵巣を刺激して妊娠を維持させるように働き出血が起こらないのです。

3、

しかしこの h CGの量が少ない場合には、卵巣を刺激する力が弱く卵巣からのホルモンが一時的に減少し月経ほどの量ではなく少量の出血が起こるのです。

いままでの研究では、「着床出血」の機序としては、どちらかいえば「受精卵の組織融解説」が有力です。

 
着床出血があると流産しやすい?
上で説明したようにこの出血は、受精卵・妊卵・胎児の異常によるものではなく、いわば着床する上での生理的なものなのです。したがって少量で4−5日以内であれば、流産が起こりやすくもなく、その後の経過は正常に行くはずです。このような出血がある妊娠は、全体の1−2%と推測されています。ただ子宮外妊娠の際にはほとんどこの時期に少量の出血がみられるので注意をする必要があります。
 
月経と間違える?
着床出血を月経と間違えて分娩予定日を間違えることが以前は起こっていましたが、最近の超音波診断などの進歩により、その出血が着床出血であったと後日診断でき、予定日も間違えることはなくなりました。
 
【2004年10月更新】
 
 
copyright(C)2002,miyake. allrightreserved